成年後見人の報酬はいくら?報酬付与の審判の仕組みと相場

後見人になって半年。母名義の通帳や領収書をコツコツまとめ、家庭裁判所に提出する「後見事務報告書」をようやく書き終えたところで、案内書類の中に見慣れない言葉を見つけました。「報酬付与の申立て」――え、後見人の仕事ってボランティアのようなものだと思っていたのに、報酬をもらってもいいの?もらうとしたら、いくらなの?そう戸惑った経験のある方は、少なくないのではないでしょうか。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 成年後見(法定後見)は無償が前提の制度ではなく、家庭裁判所に「報酬付与の申立て」をすることで本人の財産から報酬を受け取れる仕組みです
  • 基本報酬の目安は管理財産額に応じて月額2万円~6万円程度(東京家庭裁判所公表の目安による)
  • 身上監護等で特別な対応をした場合は、基本報酬額の50%の範囲内で付加報酬が認められることがあります
  • 親族が後見人になった場合も報酬請求はできます。ただし申立てをしなければ報酬は発生しません
  • 報酬はあくまで本人の財産から支払われるもので、家族が肩代わりする性質のものではありません

「身内なのに報酬をもらうなんて、なんだか気が引ける」「請求していいのか、いくらが妥当なのか誰にも教えてもらえない」――後見人になった方から、こうした声をよく聞きます。特に親族後見人の場合、本人と近い関係だからこそ、お金の話をしづらいと感じる方が多いようです。一方で、専門職(司法書士・弁護士等)が後見人に選ばれた場合には報酬が発生することを知っていても、その金額がどう決まるのか、家族側の負担になるのかどうかがわからないまま不安を抱える方もいます。この記事では、報酬付与の審判の仕組みと、公表されている報酬額の目安を整理します。

目次

後見人の報酬は、実は「無償」ではありません

成年後見制度において、後見人(保佐人・補助人を含む)は本人の財産から報酬を受け取ることができます。ただし、雇用契約のように働いた分が自動的に振り込まれるわけではありません。報酬を受け取るには、後見人自身が家庭裁判所に対して「報酬付与の申立て」を行い、審判によって金額が決定される必要があります。つまり、申立てをしなければ、たとえ後見事務を続けていても報酬はゼロのままです。多くの方が「後見人=無償のボランティア」というイメージを持っていますが、それは制度の建前ではなく、単に申立てをしていないだけ、というケースも少なくありません。

後見制度全体にどのような費用・負担がかかるのか、なりにくさも含めた全体像については、成年後見制度の費用・デメリットと「使いにくさ」|認知症になる前にできる備えでも詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。

報酬付与の審判とは?家庭裁判所への申立ての流れ

報酬付与の申立てができるのは、成年後見人・保佐人・補助人本人、そして成年後見監督人などの監督人です。申立てにあたっては、「報酬付与申立書」「報酬付与申立事情説明書」に加え、後見事務の内容を記録した「事務報告書」や本人の財産状況を示す「財産目録」の提出が必要です。申立手数料は収入印紙800円程度です。家庭裁判所は、これらの書類をもとに本人の財産状況や実際に行った後見事務の内容を確認したうえで、審判により報酬額を決定します。

申立ての時期について法律上の決まりはありませんが、実務上は後見事務の報告(多くの場合、年1回程度)とあわせて申し立てるケースが多いとされています。認知症による口座凍結の解除など、後見制度を実際に利用する際の具体的な手続きの流れは、認知症で凍結された銀行口座を解除するには?成年後見制度の手続き・費用・注意点を解説で解説していますので、あわせてご確認ください。

基本報酬の目安はいくら?管理財産額別の相場

報酬額は事案ごとに家庭裁判所が個別に判断するため、全国一律の金額が法律で決まっているわけではありません。ただし、東京家庭裁判所が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」では、管理財産額に応じたおおよその基準が示されており、実務上の目安として広く参照されています。

管理財産額の目安 基本報酬(月額)の目安
1,000万円以下 2万円程度
1,000万円超~5,000万円以下 3万円~4万円程度
5,000万円超 5万円~6万円程度

※東京家庭裁判所が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」(平成25年1月1日)による目安です。保佐人・補助人についても基本的な考え方は同様とされています。実際の報酬額は担当の家庭裁判所や個別の事情により異なりますので、最新情報は裁判所公式サイトでご確認ください。

なお、法定後見と異なり、任意後見であれば後見人の報酬をあらかじめ契約で決めておくことができます。家族が受任する場合と専門家に依頼する場合とで報酬の考え方がどう違うのかは、任意後見人の報酬相場はいくら?家族が受任する場合と専門家に依頼する場合の違いで詳しく比較しています。

付加報酬-身上監護等で特別な対応をした場合に加算されることも

基本報酬に加えて、身上監護等に特別な困難があった場合や、通常の後見事務を超える特別な行為(不動産の売却、訴訟対応、多額の医療費・介護費用の調整など)を行った場合には、「付加報酬」が認められることがあります。目安としては、基本報酬額の50%の範囲内で相当額が加算されるとされています。付加報酬が認められるかどうか、どの程度の金額になるかは、事務報告書や事情説明書に記載された内容をもとに家庭裁判所が個別に判断するため、日頃からどのような対応を行ったかを記録しておくことが重要です。

なお、任意後見制度を選んだ場合には、本人ではなく後見人の事務を見張る「任意後見監督人」が選任され、その監督人自身にも別途報酬が発生する仕組みになっています。任意後見監督人の選任の流れや報酬の目安は任意後見監督人とは?選任の流れ・期間・報酬の目安でまとめていますので、あわせてご覧ください。

親族後見人でも報酬請求はできる/報酬は本人の財産から支払われる仕組み

家族が後見人になった場合でも、専門職と同じように報酬付与の申立てをすることができます。「身内なのにお金をもらうのは気が引ける」と感じて無報酬のまま続ける方も少なくありませんが、それは選択肢の一つであって、義務ではありません。報酬を請求するかどうか、請求するとしていくらにするかは、後見事務の負担や本人の財産状況を踏まえて判断して差し支えありません。

また、報酬はあくまで本人の財産(預貯金等)から支払われるものであり、家族が自分の財布から立て替えたり、肩代わりしたりする性質のものではありません。本人の資産にまとまった金融資産が含まれる場合、家庭裁判所が信託銀行等の関わる「後見制度支援信託」や、特定の金融機関で日常生活費とは別枠管理を行う「後見制度支援預貯金」の利用を促すことがあります。これらは、日常的な生活費用の管理は後見人(親族後見人を含む)が引き続き行いつつ、まとまった金額の管理・払い戻しには専門職後見人や家庭裁判所の関与を必要とする仕組みで、報酬を含めた資金の流れ全体を整理するうえでも関係してきます。

資産の凍結を防ぐ選択肢としては、判断能力があるうちに契約で家族に管理を託す「家族信託」もあります。詳しくは家族信託で親の”資産凍結”を防ぐ|アパート・自社株の信託と任意後見・成年後見との違いで解説しています。

【実務のポイント】

報酬付与の申立ては、後見人自身が「請求」して初めて審判が始まります。何もしなければ報酬は自動的に振り込まれるわけではなく、申立てを忘れたまま数年が経過し、あとから思い出してまとめて請求するケースも実務上珍しくありません。ただし、報酬付与審判の対象となるのはあくまで「その期間に実際に行った後見事務」であり、通帳の入出金記録や領収書、事務報告書の内容が乏しいと、家庭裁判所が金額を判断しづらくなることがあります。日々の記録をこまめに残しておくことが、適正な報酬を受け取るための土台になります。

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こんな方には、この記事の内容は不要です

すでに専門職(弁護士・司法書士等)が成年後見人として選任されており、報酬に関する説明を担当専門職や家庭裁判所から直接受けている場合は、本記事の一般的な目安よりも、実際の審判内容や担当専門職への確認を優先してください。また、後見制度そのものをまだ利用しておらず、判断能力が十分にあるうちの「今できる備え」を検討したい方は、任意後見・家族信託・保険などを比較した成年後見制度の費用・デメリットと「使いにくさ」からご覧いただくほうが参考になります。

セルフチェック|報酬付与の申立てを検討すべき段階か

次の5つのうち、当てはまる(YES)ものはいくつありますか。

  • すでに家庭裁判所から成年後見人(保佐人・補助人)に選任されている、またはこれから選任される予定である
  • 後見人になってから一度も「報酬付与の申立て」をしたことがない
  • 本人の管理財産額(預貯金・不動産等)のおおよその金額を把握している
  • 身上監護や財産管理で、通常の事務を超える対応(訴訟対応・不動産売却・多額の医療費対応等)をした、またはする予定がある
  • 報酬を請求してよいものか、家族内でまだ話し合えていない

YESの数で見る、今の状況

4~5個YES:報酬付与の申立てを具体的に検討すべき段階です。管理財産額や特別な対応の有無を整理したうえで、必要書類の準備を進めましょう。

2~3個YES:制度の基本は理解できているものの、実際の申立てタイミングや金額の目安を確認する段階です。生前対策診断でご自身の状況を整理してみてください。

0~1個YES:まずは成年後見制度全体の仕組みを理解する段階です。成年後見制度の費用・デメリットと「使いにくさ」からご覧いただくとスムーズです。

よくある質問

Q. 親族が無償で後見人を引き受けた場合、あとから報酬を請求することはできますか?

報酬付与の申立ては、後見人になった当初から必ず行わなければならないものではありません。無償のまま後見事務を続け、途中から報酬付与の申立てを行うことも可能とされています。ただし、申立てより前の期間分をどこまで遡って請求できるかは個別の判断となるため、詳細は担当の家庭裁判所にご確認ください。

Q. 報酬を請求しないことを選ぶこともできますか?

できます。報酬付与の申立ては後見人の権利であり、義務ではありません。家族間の合意のもと、無報酬のまま後見事務を続ける親族後見人も少なくありません。

Q. 専門職(司法書士・弁護士等)が後見人になった場合の報酬も、同じ基準ですか?

基本的な考え方は同じで、管理財産額に応じた基本報酬に、必要に応じて付加報酬を加える枠組みで審判が行われます。専門職が選任される場合は、財産状況が複雑なケースや親族間の意見が分かれるケースが多い傾向があり、付加報酬の対象となる事務が発生しやすい面はあります。

Q. 報酬額に納得できない場合、不服を申し立てることはできますか?

報酬付与の審判に対しては、即時抗告という不服申立ての方法が制度上用意されています。具体的な要件や手続きは個別の事情によるため、担当の家庭裁判所や弁護士・司法書士にご相談ください。

Q. 報酬は本人が亡くなったあとも発生しますか?

発生しません。報酬付与の対象となるのは、本人の生存中に実際に行った後見事務です。後見は本人の死亡によって終了するため、それ以降の期間について報酬付与の申立てをすることはできません。

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あわせて読みたい

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税額計算・法的判断や、特定の保険商品の推奨を行うものではありません。報酬額はあくまで裁判所公表資料等に基づく目安であり、実際の審判内容は担当の家庭裁判所や個別の事情により異なります。報酬付与の申立てをはじめとする正式な手続きの代理は弁護士・司法書士の業務であり、行政書士は申立書類の作成サポートを行っています。代理が必要な場合は弁護士・司法書士に、税務判断は税理士にご相談ください。保険についてのご相談は提携する乗合代理店をご紹介する場合があり、その際に当社が紹介料を受け取ることがあります。費用・金額は2026年7月時点で確認できた公表資料等をもとにした目安であり、今後変更される場合があります。

この先どうするか、決めかねている方へ

当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携先をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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