任意後見人の報酬相場はいくら?家族が受任する場合と専門家に依頼する場合の違い

「後見人になってくれない?」母にそう言われたのは、去年の暮れのことでした。任意後見という制度があるらしいと聞き、パンフレットを取り寄せてはみたものの、専門家に頼むと月にいくらかかるのか、自分が引き受けたら報酬をもらってもいいものなのか、誰に聞けばいいのかも分からないまま、書類は机の引き出しにしまわれています。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 任意後見人の報酬は、家庭裁判所ではなく本人と受任者の契約で自由に決まります(家族が無報酬で引き受けることも可能です)
  • 専門職(司法書士・行政書士等)が受任する場合の月額報酬は、法定後見の報酬のめやすを参考に月2万円程度からとする例が多いとされます(あくまで目安であり確定額ではありません)
  • 家族が任意後見人になる場合も、報酬の有無・金額は契約書に明記しておく必要があります
  • 任意後見監督人が選任されると、本人の財産から監督人への報酬が別途発生します。目安は月額1万円~3万円程度(大阪家庭裁判所公表の目安)
  • 監督人の報酬は家庭裁判所の審判で決まり、年1回程度、監督報告とあわせて報酬付与の申立てを行うのが一般的です

「報酬が高いか安いか」を気にしているようで、実は多くの方が引っかかっているのは、家族がやれば無料、専門家に頼めば毎月お金がかかる、という単純な二択ではないという点です。実際には、家族が受任した場合でも契約書に報酬の定めがなければあとから食い違いが起きやすく、専門家に頼んだ場合も「毎月いくら」だけでなく「監督人への支払い」が別枠で発生します。だから、この記事では、報酬が誰に・いくら・いつ発生するのかを整理したうえで、家族が受任する場合と専門家に依頼する場合のどちらが自分たちに合っているかを判断できるようにしました。

目次

任意後見人の報酬はどう決まる?契約で自由に定める仕組み

任意後見制度は、判断能力があるうちに本人が結ぶ契約であるため、法定後見(成年後見)のように家庭裁判所が報酬額を決定する仕組みではありません。任意後見人に報酬を支払うかどうか、支払う場合の金額・支払い時期・支払い方法は、契約を結ぶ本人と受任者との間で自由に取り決めます。これは公正証書によって作成する任意後見契約書に明記しておくべき事項で、報酬に関する記載がないと、公証役場の担当者から確認を求められることもあります。

なお、任意後見契約の基本的な仕組みや効力発生のタイミング、契約に必要な書類については、任意後見契約を公証役場で作る完全ガイドで詳しく解説しています。

家族(親族)が任意後見人になる場合の報酬の考え方

子や配偶者など家族が任意後見人になる場合、報酬をゼロ(無報酬)とする契約も、月々数千円~数万円程度の報酬を定める契約も、どちらも可能です。実務上は、日常的に近くで支援できる家族が受任する場合には無報酬とする例が少なくない一方、遠方に住んでいて定期的な訪問や通院の付き添いに交通費・時間的な負担が生じる場合は、実費とは別に一定額の報酬を定めておく例もあります。

契約書の報酬条項に書いておきたい3つのこと
報酬の有無:無報酬にするか、報酬を定めるか
金額と支払い時期:月額いくらを、いつ(毎月・年1回など)支払うか
特別な事務への報酬:不動産の売却など通常の事務を超える対応をした場合の特別報酬をどうするか

これらを契約の段階で言葉にしておかないと、いざ判断能力が低下してから「言った・言わない」の食い違いが起きやすくなります。ひとりで身近に頼れる家族がいない場合の任意後見の使い方や注意点は、任意後見制度、おひとりさまが利用するメリットと注意点で解説しています。

専門家(司法書士・行政書士等)に依頼する場合の報酬相場

家族の中に受任できる人がいない場合や、財産管理を専門家に任せたい場合は、司法書士・行政書士などの専門職が任意後見人になるケースがあります。専門職の報酬も契約で自由に定められる点は家族が受任する場合と同じですが、実務上は法定後見(成年後見)における「成年後見人等の報酬額のめやす」を参考に設定されることが多いとされています。大阪家庭裁判所が公表している目安では、管理財産額1,000万円以下で月額2万円程度、1,000万円超5,000万円以下で月額3万円~4万円程度、5,000万円超で月額5万円~6万円程度とされています。これはあくまで法定後見における裁判所の目安であり、任意後見の専門職報酬がこの金額に固定されるわけではなく、事務所や契約内容によって異なる点には注意が必要です。

契約時に発生する公証役場の費用や、月額報酬以外にかかる費用の内訳まで含めた総額の目安は、任意後見制度の費用はいくら?月額報酬・手続き費用と家族信託との違いでまとめています。

任意後見監督人にも報酬が発生する仕組み

任意後見人の報酬を家族間で無報酬に決めたとしても、実際に契約の効力が生じたあとには、もうひとつ別の費用が発生します。任意後見は、本人の判断能力が低下したあと、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」が任意後見人の事務を監督することで初めて効力が生じる仕組みだからです。この任意後見監督人への報酬は、任意後見人自身の報酬とは異なり、家庭裁判所の審判によって金額が決定され、本人の財産の中から支払われます。目安としては、管理財産額5,000万円以下で月額1万円~2万円程度、5,000万円を超える場合で月額2万5,000円~3万円程度とされています(大阪家庭裁判所公表の目安。家庭裁判所や地域によって異なる場合があります)。任意後見監督人は、年1回程度の頻度で本人の財産状況や後見事務の状況を家庭裁判所へ報告し、そのタイミングにあわせて報酬付与の申立てを行うのが一般的です。

報酬はいつ・どうやって支払われる?知っておきたい実務

任意後見人・任意後見監督人ともに、報酬は本人の財産から支払われます。任意後見人の報酬は契約で定めたタイミング(毎月・半年ごとなど)で本人の口座から支払われ、任意後見監督人の報酬は、家庭裁判所の審判が確定したあとに本人の財産から支払われます。いずれも支払いの原資は本人の財産であり、家族が肩代わりして負担するものではありません。ただし、本人の財産だけで今後の生活費・医療費・介護費用と報酬の支払いをまかないきれるかが見えにくいという不安を抱える方も少なくありません。

家族が受任する場合と専門家に依頼する場合の比較

ここまでの内容を、家族が任意後見人になる場合と専門家に依頼する場合とで整理すると、次のようになります。

項目 家族が受任する場合 専門家に依頼する場合
報酬の有無 無報酬・少額の報酬とする例が多い 報酬を定めるのが一般的
月額報酬の目安 0円~数万円程度(契約次第) 2万円程度~(財産規模に応じて増額)
誰が決めるか 本人と家族の契約 本人と専門家の契約
監督人への報酬 別途必要(家庭裁判所が決定) 別途必要(家庭裁判所が決定)
向いているケース 財産構成がシンプルで、身近に信頼できる家族がいる 財産規模が大きい・家族が遠方や不在で実務を任せたい

いずれの場合も、任意後見監督人への報酬は避けて通れない費用です。家族が受任するか専門家に依頼するかを検討する際は、この監督人報酬を含めた総額で考えることをおすすめします。

【実務のポイント】
任意後見人自身の報酬は契約で自由に決められるため、家庭裁判所への「報酬付与の申立て」は不要です。一方で、任意後見監督人の報酬だけは別枠で必ず家庭裁判所の審判が必要になります。この2つを混同すると、「家族なら無料のはず」「専門家に頼んでも月2万円くらいで済むはず」と誤解したまま契約を結んでしまい、あとから監督人への支払いに驚くケースがあります。契約時には、任意後見人自身の報酬と、監督人への報酬(目安月額1万円~3万円程度)の両方を分けて確認しておくことをおすすめします(出典:厚生労働省「成年後見はやわかり」、大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」を参考に作成)。
こんな場合は、いま無理に専門家への依頼を急ぐ必要はありません
すでに家族内で「誰が引き受けるか」「報酬は無報酬でよいか」の合意ができていて、管理する財産も自宅と預貯金程度で複雑な資産(収益不動産・自社株など)がない場合は、家族による任意後見契約で十分に対応できることが多い状況です。まずは契約書の報酬条項をどう書くかを、次のセルフチェックで確認してみてください。

ご自身に当てはまるか セルフチェック

  • 任意後見人の候補となる家族と、報酬を払うかどうかをまだ話し合っていない
  • 管理することになる財産(不動産・預貯金等)の規模をまだ把握できていない
  • 専門家に依頼した場合の費用感が分からず不安がある
  • 家族の中で「誰が受任するか」「報酬をどうするか」の意見が割れそうだ
  • 任意後見監督人への報酬について、これまで聞いたことがなかった
0~1個該当: 該当が0~1個の方は、今すぐ専門家に依頼する必要はありません。まずは制度の基本を確認しながら、家族と報酬について話す時間を作ることから始めてください。
2~3個該当: 判断が必要な論点があります。生前対策診断で、ご自身の状況に合った対策を整理してみてください。
4個以上該当: 早めに専門家と一緒に整理した方が安心な状況です。30分の整理面談で、報酬の決め方や進め方を相談できます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 家族が無報酬でやれば、費用はかからないのではないですか?

任意後見人自身の報酬をゼロにすることは可能ですが、契約の効力が生じたあとは家庭裁判所が任意後見監督人を選任するため、本人の財産から監督人への報酬(目安月額1万円~3万円程度)が別途発生します。家族が無報酬で受任しても、費用がまったくかからないわけではない点に注意が必要です。

Q2. 専門家に頼むと費用が高いのではないですか?

専門家に依頼する場合の月額報酬は、法定後見の報酬のめやすを参考に月2万円程度からとされることが多く(あくまで目安であり確定額ではありません)、これに加えて任意後見監督人への報酬も発生します。ただし、専門家に依頼すると財産管理や身上監護の実務を任せられ、家族自身の負担が減る点も費用とあわせて考える価値があります。

Q3. 専門家に頼むと、家族が受任する場合と何が変わりますか?

専門家は財産管理・契約手続き・報告書の作成などの実務に慣れているため、書類作成や金融機関とのやり取りにかかる家族の手間や心理的な負担を軽減できます。一方で、日常的な見守りや細かな意思疎通は、身近にいる家族の方が対応しやすい面もあります。財産の規模や家族の状況によって、どちらが向いているかは変わります。

Q4. 報酬はいつから発生しますか?

任意後見人・任意後見監督人への報酬は、いずれも任意後見契約の効力が発生したあと(本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したあと)から発生します。契約を結んだ時点では、まだ報酬の支払いは始まりません。

Q5. 報酬額はあとから変更できますか?

任意後見人の報酬は契約に基づくため、当事者の合意があれば契約変更の手続きを経て見直せる場合があります。一方、任意後見監督人の報酬は家庭裁判所の審判で個別に決定されるため、当事者間の合意だけで変更することはできません。

まとめ:報酬は「誰が・いくら・いつ」の3点で整理する

任意後見人の報酬は、家庭裁判所ではなく契約で自由に決まります。家族が受任すれば無報酬にすることもできますが、任意後見監督人への報酬(目安月額1万円~3万円程度)は、家族が受任しても専門家に依頼しても必ず発生します。専門家に依頼する場合の報酬は月2万円程度からを目安に、財産規模や事務所によって幅があります。「誰が受任するか」「報酬をいくらにするか」「監督人への支払いをどう見込むか」の3点を契約前に整理しておくことが、あとから家族間の食い違いを防ぐ一番の近道です。

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なお、任意後見人・任意後見監督人への報酬や生活費・医療費の支払いは、いずれも本人の財産から捻出することが前提です。預貯金だけでこれらの費用を将来にわたってまかなえるか不安な場合、一時払い終身保険の指定代理請求特約を使うと、判断能力が低下したあとでも家族が保険金を請求できる仕組みがあり、資金の流動性を確保する選択肢のひとつになります。生命保険を活用した資金準備の考え方は、生命保険と相続の完全ガイドで保険の役割を確認したうえで、他の方法(預貯金の取り分け・家族信託など)とあわせて専門家と相談しながら決めることをおすすめします。

※ご紹介にあたり、当社が提携代理店から紹介料を受け取る場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税額計算や保険商品の推奨を行うものではありません。税務・法的な判断が必要な場合は、税理士・弁護士など専門家にご確認ください。

本記事は一般的な情報提供を目的として作成しており、個別の法的・税務判断を保証するものではありません。報酬額はいずれも目安であり、実際の手続きにあたっては、最寄りの家庭裁判所・公証役場、および司法書士・行政書士・弁護士など専門家にご確認ください。報酬に関する金額は2026年7月時点で確認できた公表資料等をもとにした目安であり、今後変更される場合があります。監修:提携行政書士法人による監修体制。

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この記事を書いた人

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