ペットは、高齢期の暮らしに生きがいと安らぎをもたらしてくれる存在です。一方で、高齢になってから新しくペットを迎えるときには、若い頃とは違う視点での準備が欠かせません。最も大切なのは、「自分とペット、どちらが先に世話をできなくなるか」を現実的に考えておくことです。
この記事では、愛知県内で相続・生前対策のご相談を受けている当窓口の視点から、高齢でペットを飼う前に考えておくべきことを、中立の立場で整理します。ペットとの暮らしを最後まで幸せなものにするための、現実的な備えの話です。
高齢でペットを飼う前に考える5つのこと
十数年の飼育期間に、入院・判断能力の低下・死亡もありうる
体力や住環境に合った動物・年齢を選ぶ
餌代・医療費など継続的な費用を無理なく払えるか
飼い始める前に引き受け先を確保しておく(最も重要)
ペット信託・負担付き遺贈で世話とお金をセットで託す
1. 自分とペット、どちらが先かを考える
犬や猫の寿命は十数年に及びます。今は元気でも、飼育を続ける十数年の間に、自分が入院したり、判断能力が低下したり、亡くなったりする可能性があります。「最後まで自分で世話ができるか」を、迎える前に冷静に見つめることが出発点です。
2. 世話を続けられる体力・環境か
散歩、通院、日々の世話には体力が必要です。大型犬は散歩の負担が大きく、活発な動物は運動量も多くなります。自分の体力や住環境に合った動物・年齢を選ぶことが、無理なく飼い続けるコツです。子犬・子猫より、落ち着いたシニアの動物のほうが、高齢の飼い主に合う場合もあります。
3. 費用の見通しを立てる
餌代・医療費・ワクチン・トリミングなど、ペットの飼育には継続的な費用がかかります。特に高齢のペットは医療費が増えがちです。年金など限られた収入のなかで、無理なく続けられるかを確認しておきましょう。
4. もしものときの引き受け先を決めておく
これが最も重要です。自分に何かあったとき、ペットを引き受けてくれる人や団体を、飼い始める前に確保しておくことが理想です。家族・友人のほか、老犬・老猫ホームなども選択肢になります。引き受け先の承諾を得ておけば、安心してペットを迎えられます。飼い主が亡くなった後のペットの扱いは自分が先に亡くなったら、ペットはどうなるかで解説しています。
5. 飼育費を託す仕組みを検討する
引き受け先を決めるだけでなく、飼育費を確実に渡す仕組みも考えておくと万全です。ペット信託や負担付き遺贈を使えば、世話とお金をセットで託せます。高齢で飼い始めるなら、こうした備えを「飼う前提」として考えておくと安心です。
何歳まで飼える?年齢と飼育期間の見方
「何歳からは飼えない」という法律上の年齢制限はありません。ただし、動物愛護管理法では、飼い主は動物が命を終えるまで適切に飼う「終生飼養」に努めることとされています(第7条)。目安は「今の自分の年齢」に「ペットが生きる年数」を足して考えることです。犬や猫は15年以上生きることもあります。
| 今の飼い主の年齢 | 15年飼ったときの年齢 | 考えておきたいこと |
|---|---|---|
| 65歳 | 80歳 | 散歩や通院を続けられる体力があるか。シニアの犬猫も選べます |
| 70歳 | 85歳 | 入院や施設入居になる可能性を前提に、預け先を先に決めておく |
| 75歳 | 90歳 | 子犬・子猫より、落ち着いた成犬・成猫やシニア、小型の動物を検討する |
1年あたりの飼育費と、残りの年数でかかる総額
神奈川県の案内ページによると、1年間の飼育費用の目安は犬が約41万4000円、猫が約17万8000円です(アニコム損害保険「ペットにかける年間支出調査」2024年)。これに年数をかけると、次のような目安になります。
| 1年 | 10年 | 15年 | |
|---|---|---|---|
| 犬 | 約41万4000円 | 約414万円 | 約621万円 |
| 猫 | 約17万8000円 | 約178万円 | 約267万円 |
上の10年・15年の金額は、年間の目安に年数をかけた単純計算です。大きな手術や長い通院があれば、さらにかかります。年金の範囲で無理なく払えるかを、飼う前に家計の数字で確かめておきましょう。
飼えなくなったときの預け先を、先に「試しておく」
神奈川県の案内では、家族・友人・近所の人、ペットホテルやペットシッターなどの預け先を事前に探し、短い期間で試しに利用しておくことをすすめています。同じ案内では、県の動物愛護センターに「飼えなくなった」として持ち込まれる犬猫の約7割が、飼い主の高齢が理由とされています。急な入院のときに預けられる先があるかが、いちばんの分かれ目です。
- トイレのしつけ、人や他の動物に慣れさせる(預かってもらいやすくなります)
- ワクチン接種、ノミ・ダニ予防、健康診断を毎年続ける
- ペットの名前・年齢・持病・かかりつけ病院・食事の内容を1枚のメモにしておく
もしものときの受け皿は4種類|向き不向きの比較
| 受け皿 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家族・友人 | 引き受けてくれる人が決まっている | 口約束だけにせず、飼育費をどう渡すかも話しておく |
| 老犬・老猫ホーム | 家族に頼めない、介護が必要になった | 施設ごとに料金や条件が大きく違う。見学と見積もりを取る |
| ペット後見の連携事業者 | 身近に頼れる人がいない | 契約内容と、事業者が続かなくなった場合の扱いを確認する |
| ペット信託・負担付遺贈 | お金と世話をセットで託したい | 引き受ける人の了承と、書面(遺言・契約書)が要る |
お金と世話をセットで託す仕組みは、それぞれペット信託、負担付き遺贈で詳しく解説しています。
飼う前の最終チェック10項目
- 15年後の自分の年齢を計算した
- 毎日の世話(散歩・トイレ・食事)を、風邪の日でも続けられそうだ
- 1年の飼育費と、病気のときの費用を年金の範囲で払える
- 住まい(賃貸・集合住宅)の契約で、飼えるか・何頭までかを確かめた
- 入院したときに預かってくれる人や施設に、1回は試しに預けた
- 自分に何かあったとき引き取る人に、事前に了承をもらった
- 引き取る人に渡す飼育費の準備方法を決めた
- ペットの情報メモを作り、家族に場所を伝えた
- かかりつけの動物病院がある
- 迷ったときは、保護された成犬・成猫やシニアの受け入れも検討した
それでもペットは高齢期の支えになる
ここまで備えの話を中心にお伝えしましたが、ペットとの暮らしには、生活のハリ・心の安らぎ・人とのつながりといった大きな価値があります。大切なのは、「飼わない」という結論ではなく、もしものときの備えを整えたうえで、安心してペットとの暮らしを楽しむことです。備えがあるからこそ、最後まで幸せに寄り添えます。ペットの終活全体の考え方はペットの終活、飼い主が生前にすべきことをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
高齢でも新しくペットを飼って大丈夫でしょうか?
もしものときの引き受け先と飼育費の備えを整えておけば、前向きに検討できます。自分の体力に合った動物・年齢を選び、無理のない範囲で楽しむことが大切です。落ち着いたシニアの動物を迎える選択肢もあります。
引き受け先が見つからない場合は?
老犬・老猫ホームやペットの終身預かりを行う団体などが選択肢になります。費用や条件はさまざまなので、飼い始める前に情報を集め、契約や承諾を得ておくことをおすすめします。
飼育費はどのように準備すればいいですか?
ペットの余命を見据えて、餌代・医療費などの見込みを立てておきます。もしものときに確実に渡せるよう、ペット信託や負担付き遺贈といった仕組みとあわせて準備すると安心です。
入院が決まったときは、まず預け先に連絡し、ペットの情報メモ(食事・持病・かかりつけ病院)を渡します。預け先を探す時間がないことが多いため、元気なうちに「試しに1泊預ける」ところまで進めておくと慌てません。
賃貸住宅でもペットを飼えますか?
契約でペットの飼育が認められているか、何頭までかを確認する必要があります。契約書や管理規約に書かれていない場合は、管理会社や大家さんに先に確認しましょう。
介護が必要になったら、ペットはどうなりますか?
在宅でも施設でも、ペットを連れて入れるとは限りません。施設に入る場合は、ペットの同居が可能かを先に確認し、難しければ預け先を使うことになります。老犬・老猫ホームの料金は施設ごとに違うため、見積もりを取って比べます。
参考にした公的情報
- 神奈川県「高齢者の方のペットの飼い方」(飼う前の確認事項・預け先・年間飼育費の目安。2026年10月に確認)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」第7条(終生飼養)
- 環境省「動物の愛護と適切な管理」(動物愛護管理法に関する案内)
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本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。複数の提携行政書士による監修体制で運営しており、特定個人の士業を推奨するものではありません。
