個人年金保険を相続したときの税金と手続き|受取開始前・受取中・保証期間の3パターン

親が個人年金保険を受け取っていた。あるいは、受け取りが始まる前に亡くなった。手元に年金証書や保険証券はあるけれど、これが相続財産になるのか、税金はどうなるのか、まず何をすればいいのかが分からない。個人年金は死亡保険金と違って、亡くなったタイミングによって扱いが変わるので、調べても答えが一つに定まりません。

分かれ目は3つです。受取開始前か、受取中か、保証期間の残りを遺族が引き継ぐのか。この3つで、相続税の対象になるものが「死亡給付金」なのか「年金を受け取る権利」なのかが変わり、その後に受け取る年金への所得税の扱いも変わります。

この記事では、3つのパターンごとの税金と手続きを、国税庁の公表資料と相続税法の規定にもとづいて整理します。相続税と所得税が二重にかからないようにする調整の仕組みまで含めて、順にたどります。

目次

先に結論:いつ亡くなったかで、相続するものが変わる

個人年金保険は、亡くなった時期で扱いが3つに分かれる

受取開始前に死亡

死亡給付金

払い込んだ保険料相当額などが遺族へ。死亡保険金と同じ考え方で課税されます。

💴

受取中・保証期間中に死亡

年金受給権

残りを受け取る権利が相続財産に。相続税法24条の方法で評価します。

📅

相続した後に受け取る年金

所得税

非課税部分と課税部分に分けて計算。相続税との二重課税を避ける調整があります。

まず年金証書で「受取開始日」と「保証期間」を確認する → そこから扱いが決まる

出典:国税庁タックスアンサーNo.4114・No.4123・No.1620、相続税法24条。2026年9月時点。個別の判定は税理士にご確認ください。

受取開始前なら死亡給付金、受取開始後なら年金を受け取る権利。どちらも相続税の対象になりますが、評価の方法が違います。そして相続した後に実際に受け取る年金には、あらためて所得税がかかります。同じお金に二度課税されないよう、所得税の計算では相続税がかかった部分を差し引く仕組みが用意されています。

パターン1|受取開始前に亡くなった(死亡給付金)

年金の受け取りが始まる前に被保険者が亡くなると、多くの個人年金保険では死亡給付金が支払われます。金額は、それまでに払い込んだ保険料相当額や、その時点の責任準備金相当額とされているのが一般的です。契約により異なるので、証券や約款で確認してください。

課税関係は死亡保険金と同じ考え方です。保険料を負担していた人が被保険者本人で、受取人が別の人なら相続税。保険料を負担した人と受取人が同じなら所得税(一時所得)。3者がすべて別なら贈与税になります。

相続税になる形で、受け取ったのが相続人であれば、非課税枠が使えます。国税庁タックスアンサーNo.4114の「500万円 × 法定相続人の数」です。同じNo.4114は「相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません」とも明記しているので、孫や兄弟姉妹を受取人にしている契約では枠が使えません。3者の組み合わせごとの税金は生命保険の契約者・被保険者・受取人と税金の早見表にまとめました。

⚠️ 「死亡給付金」と「死亡保険金」は別の欄に書かれている

個人年金保険の証券では、年金額の欄と死亡給付金の欄が離れた場所にあることがあります。死亡給付金の受取人が誰になっているかは、年金の受取人とは別に指定されている場合があるので、証券だけで判断せず保険会社に確認してください。取扱いは会社・商品により異なります。(2026年9月時点)

パターン2|受取中・保証期間中に亡くなった(年金受給権)

年金の受け取りが始まった後に亡くなると、保証期間が付いている契約では、残りの期間の年金を遺族が受け取れます。このとき相続財産になるのは、支払われた年金そのものではなく「これから年金を受け取る権利」です。国税庁タックスアンサーNo.4123は、この権利を年金受給権と呼び、相続税の課税対象になると整理しています。

年金受給権の相続税評価

No.4123は「年金受給権が相続税の課税対象となるときの価額の評価は、相続税法第24条または第25条の規定に基づき解約返戻金相当額などにより評価します」としています。

相続税法24条は、有期定期金(受け取る期間が決まっている年金)について、次の3つの金額のうち最も多い金額で評価すると定めています。

  • 解約返戻金の金額
  • 年金に代えて一時金の給付を受けられる場合は、その一時金の金額
  • 残りの給付期間に応じ、1年当たりの平均給付額に、その契約の予定利率による複利年金現価率を乗じて得た金額

(有期定期金の評価は相続税法24条1項1号。終身定期金や無期定期金は同項の別の号、給付事由がまだ発生していない定期金に関する権利は25条によります。2026年9月時点。実際の評価額は保険会社が発行する証明書の金額によることが一般的です)

実務では、保険会社に「年金受給権の評価額証明書」を発行してもらい、その金額を申告に使います。自分で複利年金現価率を調べて計算する場面はほとんどありません。まず保険会社に、相続税の申告に使う評価額の証明書を出してもらえるか確認するのが早道です。

一時金でまとめて受け取るか、年金として続けるか

保証期間の残りは、年金として毎年受け取る方法と、一時金にまとめて受け取る方法を選べる契約が多くあります。どちらを選んでも相続税の評価額は原則として同じ考え方で決まりますが、その後の所得税の出方が変わります。

受け取り方相続税その後の所得税
年金として毎年受け取る年金受給権の評価額に課税毎年、課税部分について雑所得。非課税部分との按分計算が必要
一時金でまとめて受け取る同上(一時金相当額が評価に反映される)相続税の対象になった部分には所得税はかからない扱いが原則

(会社・商品・契約時期により取扱いは異なります。2026年9月時点。どちらが有利かは他の所得や相続財産の状況で変わるため、税理士にご確認ください)

相続した年金に所得税がかかるとき|二重課税を避ける調整

年金受給権に相続税がかかったうえ、その権利にもとづいて毎年受け取る年金にも所得税がかかる。これでは同じお金に二度課税されることになります。この点を扱ったのが最高裁平成22年7月6日の判決で、相続税の課税対象になった部分については所得税を課さない、という判断が示されました。

この判決を受けて所得税の計算方法が整備され、現在は国税庁タックスアンサーNo.1620「相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係」に整理されています。No.1620は「年金の収入金額を非課税部分と課税部分に振り分けた上で計算をします」と説明しており、年金支給の初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増えていく形になります。

計算の方法は、その契約が旧相続税法対象年金にあたるか、新相続税法対象年金にあたるかで分かれます。国税庁は計算用の明細書を用意していますが、契約時期と相続開始時期で区分が変わるため、自分で判定するのは負担が大きい部分です。年金の支払通知書と、相続税の申告で使った年金受給権の評価額を持って、税理士に確認するのが確実です。

受け取る側の実務としては、源泉徴収にも注意が必要です。国税庁タックスアンサーNo.1615によれば、遺族が支払を受ける個人年金は、年金の額から対応する保険料等を差し引いた金額に10.21%を乗じた金額が源泉徴収されます。その差引後の金額が年25万円未満であれば源泉徴収は行われません。源泉徴収された税額は、確定申告で精算します。

相談現場から|相談員メモ

個人年金の証券は、年金額の欄と死亡給付金の欄が離れて印刷されていることが多く、お持ちいただいたご本人から「どちらが誰に行くのか読み取れなかった」と伺うことがよくあります。年金の受取人と死亡給付金の受取人が別々に指定されていて、片方だけ見直したまま止まっている契約も見かけます。当社の相談では、証券と一緒に「年金の受取開始日」「保証期間」「死亡給付金の受取人」の3点を先に確認しています。取扱いは会社・商品によって異なり、税務の判定は税理士の領域ですが、どこを問い合わせればよいかはその場で見当がつきます。

契約者と被保険者が違う個人年金

夫が保険料を払い、妻を年金受取人にしている。こうした形では、年金の受け取りが始まる時点で、妻が「年金を受け取る権利」を夫から贈与されたものとみなされます。国税庁タックスアンサーNo.1615も、亡くなった人も受取人も保険料を負担していない場合の年金受給権は、贈与により取得したものとみなされて贈与税の課税対象になると整理しています。

贈与税の対象になるのは、受け取る年金の合計額ではなく年金受給権の評価額です。それでも金額は大きくなりやすく、暦年課税の基礎控除110万円を超える部分に贈与税がかかります。そのうえで、その後に受け取る年金には所得税もかかります。ここでも二重課税を避ける調整の考え方が働きます。

誰が保険料を払っていたかを後から証明するのは手間がかかります。引き落とし口座の名義と、保険料控除証明書が誰の年末調整や確定申告で使われていたか。この2つが手がかりです。相続時に生命保険の契約者と支払者が異なる場合のリスクで、確認の進め方を整理しています。

遺族がする手続きの流れ

手続きの入口は保険会社への連絡です。年金証書か保険証券に記載された証券番号を手元に置いて、コールセンターに「年金を受け取っていた契約者が亡くなった」と伝えます。受取開始前なら死亡給付金の請求、受取中なら継続年金または一時金の請求として、必要な書類が送られてきます。

  • 1. 保険会社へ連絡する。証券番号、亡くなった日、続柄を伝えます。年金証書が見当たらなければ、その旨も伝えてください。
  • 2. 届いた請求書に記入する。あわせて求められるのは、死亡診断書の写しや戸籍謄本、請求する人の本人確認書類などが一般的です(会社により異なります)。
  • 3. 年金を継続するか一時金にするかを選ぶ。選択できる契約であれば、この段階で決めます。
  • 4. 相続税の申告に使う年金受給権の評価額証明書を依頼する。請求と同時に頼んでおくと二度手間になりません。
  • 5. 入金後、源泉徴収の有無と金額を支払通知書で確認する。確定申告が必要かどうかの判断材料になります。

そもそもどの会社と契約していたか分からない場合は、通帳の引き落とし履歴、郵便物、確定申告書の生命保険料控除の欄が手がかりになります。それでも見つからないときは生命保険協会の生命保険契約照会制度が使えます(利用料はWEB申請6,000円・書面申請7,000円、2026年4月改定・2026年9月時点)。請求全般の流れは死亡保険金の請求手続きと必要書類|いつ振り込まれる?時効は3年にまとめています。

まだ受け取りが始まっていないなら、確認しておくこと

親の個人年金がまだ受取開始前なら、確認しておける項目があります。年金の受取人、死亡給付金の受取人、保証期間の有無と長さ、そして保険料を実際に負担しているのが誰か。この4つが分かれば、いざというときにどの税金の話になるかの見当がつきます。

受取人の変更は契約者本人の申し出で、多くの会社が書類1枚で受け付けています。ただし契約者本人に判断能力があることが前提で、認知症が進んだ後では手続きが止まります。放置したときに起きることは生命保険の受取人、そのままになっていませんかに、動かせなくなった場合の対処は認知症の親の保険は解約できないにまとめました。

まとめ

個人年金保険の相続は、受取開始前なら死亡給付金、受取開始後なら年金を受け取る権利。この分かれ目をまず押さえてください。年金受給権は相続税法24条の方法で評価し、実務では保険会社の評価額証明書を使います。

相続した後に受け取る年金には所得税がかかりますが、相続税がかかった部分には課税されないよう調整されます。計算は契約時期で区分が分かれるため、支払通知書と評価額証明書をそろえて税理士に確認するのが確実です。まずは保険会社への連絡と、年金証書での受取開始日・保証期間の確認から始めてください。

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※本記事は2026年9月時点の法令・国税庁公表資料にもとづく一般的な整理です。税制は改正されることがあり、実際の課税関係は契約内容・契約時期・保険料の負担状況・他の所得や財産の状況によって異なります。年金額や死亡給付金の内容、必要書類は保険会社および商品により異なります。個別の税務上の判断は税理士に、契約内容の確認はご契約先の保険会社にご確認ください。

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この記事を書いた人

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