「使うことになったので、一時払い終身保険を解約したい」「昔入った契約を整理したい」。解約を考えるきっかけは、住み替えや施設の費用、ご自身の考えの変化など、さまざまです。
解約は、いったん手続きが進むと元には戻せません。戻る金額と税金を知らないまま進めて、あとから「思っていたより少なかった」となる前に、確認しておきたい点を整理しました。この記事は、解約をすすめるものでも、とどまるようすすめるものでもありません。
✅ この記事の結論
- 解約すると、保障はなくなり、解約返戻金が契約者に戻ります。あとから取り消すことはできません
- 戻る金額は、経過年数や契約者貸付の残高などで決まります。事前に、保険会社へ「今、解約したらいくら戻るか」を確認します
- 戻った金額が払込保険料を上回ると、差額が一時所得として課税される場合があります。下回るときは、課税されません
- お金が必要なだけなら、契約者貸付など、解約しない方法もあります。新しい契約への乗り換えは、新契約が成立してから解約します
解約すると、何が起きるか
解約は、将来に向かって契約をなくす手続きです。公益財団法人生命保険文化センターの資料でも、一度解約すると元に戻せないことが注意点として挙げられています。起きることを、表にまとめます。
| 起きること | 内容 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 保障がなくなる | 亡くなったときの死亡保険金は、出なくなります | 家族に残したい金額を、ほかの方法で用意できるか |
| 解約返戻金が戻る | 戻るのは契約者です。受取人ではありません | 契約者が誰か。証券の「契約者」欄で確認します |
| 戻る金額は、解約日の時点で決まる | 一般に、解約の請求書類が保険会社に届いた日などが基準になります | 会社によって扱いが違うため、手続きの前に確認します |
| 取り消せない | 解約後に、同じ条件で契約し直すことは、原則できません | 新しい契約に入る場合、新契約が成立してから解約します |
| 非課税枠に使える死亡保険金がなくなる | 相続税の計算で、その分の非課税枠を使えなくなります | 相続税がかかる見込みがあるか |
手続きの流れ
解約の手続きは、契約している保険会社が行います。銀行の窓口で契約した場合でも、解約の受付先は保険会社であることが多いため、連絡先は証券で確かめてください。会社によって細かな流れは異なりますが、おおむね次の順序です。
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 契約を確認する | 証券で、保険会社名、契約者、証券番号を確かめます | 契約者本人でないと、解約の手続きはできません |
| 2. 戻る金額を聞く | 保険会社の窓口で、現時点の解約返戻金の見込みを確認します | 契約者貸付の残高があれば、差し引かれます |
| 3. 書類を取り寄せる | 解約の請求書を、保険会社から取り寄せます | 書類の名称や取り寄せ方法は、会社で異なります |
| 4. 書類をそろえて提出する | 一般に、請求書、保険証券、本人確認書類を提出します | 証券を紛失している場合の扱いは、会社に確認します |
| 5. 解約日が確定し、返戻金が振り込まれる | 書類に不備がなければ、指定の口座に振り込まれます | 解約日は、書類の到着日などで決まります |
解約する前に、手順の2で「今、いくら戻るか」を必ず聞いてください。設計書の表は、契約時の予定にすぎません。実際の金額は、保険会社に確認するのがもっとも確実です。
戻る金額は、何で決まるか
戻る金額は、払い込んだ保険料と同じとは限りません。契約して間もない時期は、払込額を下回るのが一般的で、年数がたつにつれて増えていきます。そのほかに、次の点で金額が変わります。
| 項目 | 戻る金額への影響 |
|---|---|
| 経過年数 | 浅いほど、払込額を下回りやすくなります |
| 契約者貸付の残高 | 借りている元金と利息が、返戻金から差し引かれます |
| 市場金利の調整 | 市場金利による調整が付いている商品では、解約時の金利の状況で返戻金が増減します |
| 外貨建ての場合の為替 | 外貨で計算された金額を、円に換えて受け取ります。為替の水準で、円の金額が変わります |
| 変額の場合の運用成績 | 運用の結果によって、返戻金が増減します |
設計書の見方は、一時払い終身保険とは?向く人・向かない人の早見表と、解約返戻金・非課税枠の考え方で詳しく説明しています。元本割れが起きやすい場面は、一時払い終身保険のデメリットの記事にも整理しています。
解約返戻金にかかる税金
解約返戻金を受け取ったとき、払い込んだ保険料を上回った部分が、所得税の「一時所得」として課税対象になる場合があります。国税庁のタックスアンサー No.1755 に、考え方が載っています。計算は、次のとおりです。
一時所得 = 解約返戻金 − 払い込んだ保険料 − 特別控除(最高50万円)
課税の対象になるのは、この一時所得の金額の2分の1です。
| 仮の例 | 解約返戻金 | 払込保険料 | 差額 | 特別控除後 | 課税対象(2分の1) |
|---|---|---|---|---|---|
| 例1 | 1,060万円 | 1,000万円 | 60万円 | 10万円 | 5万円 |
| 例2 | 950万円 | 1,000万円 | マイナス50万円 | 0円 | 課税なし |
| 例3 | 1,200万円 | 1,000万円 | 200万円 | 150万円 | 75万円 |
※ 説明用の仮の数字です。ほかの一時所得がない場合の計算で、実際の税額は、その年のほかの所得などによって変わります。出典:国税庁 タックスアンサー No.1755。
注意したい点が、いくつかあります。
- 保険料を負担した人と、返戻金を受け取る人が違うと、贈与税の扱いになることがあります。たとえば、親が保険料を払い、契約者が子の場合です。契約形態の見方は、契約者・被保険者・受取人と税金の早見表にあります。
- 外貨建て・変額は、円に換算した金額で考えます。細かな計算の扱いは、税理士または税務署に確認してください。
- 所得が増えると、税金以外にも影響が出ることがあります。国民健康保険料や介護保険料など、所得をもとに決まる負担が増える場合があります。心配なときは、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
解約する前に、一緒に確認しませんか
証券や設計書の写しをお持ちいただければ、契約者・受取人の組み合わせと、解約返戻金の見込み、税金の考え方を一緒に確認できます。解約をすすめることも、とどまるようすすめることもありません。確認した結果「今は動かない」となる場合も、そのままお伝えします。
お電話:052-766-5650(相談中は折り返しになります)
30分の無料相談を申し込む(愛知県内は対面、ほかはオンライン)→来所や電話が難しい方へ:保険証券や設計書の写真をLINEで送っていただければ、相談員が内容を見て2営業日以内(土日祝を除く)に返信します。
解約以外の選択肢
「まとまったお金が必要になった」だけなら、解約以外の方法で足りることがあります。主なものを並べます。
| 方法 | どんなときに | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 契約者貸付 | 一時的に、資金が必要なとき | 解約返戻金の範囲内で、会社の定める割合まで借りる仕組みです。利息がかかり、返済しないまま亡くなると、死亡保険金から差し引かれます |
| 一部解約(減額) | 必要な金額が、一部だけのとき | 取り扱いの有無や条件は、商品によって違います |
| 預貯金など、ほかの資金を使う | 手元に、使える資金が別にあるとき | 生活費を取り崩しすぎないようにします |
| そのまま持ち続ける | 使う予定が、まだ決まっていないとき | 受取人や契約者の見直しだけで足りる場合もあります(受取人の見直し) |
慌てて解約しないほうがよい場面
| 場面 | 理由 | 先にやること |
|---|---|---|
| 新しい保険に乗り換えるとき | 新契約が、告知の結果などで成立しないことがあります | 新契約が成立したことを確認してから解約します(乗り換え前に確認する5点) |
| 契約から日が浅いとき | 解約返戻金が、払込額を大きく下回っていることがあります | 設計書の表と、保険会社の回答を見比べます |
| 相続税がかかる見込みがあるとき | 死亡保険金の非課税枠が使えなくなります | 財産の合計と法定相続人の数を確かめます |
| 契約者である親が、手続きの内容を理解しにくいとき | 子が代わりに解約することは、原則できません | 代理の手続きの可否は、保険会社に確認します(認知症による口座凍結とは) |
相談現場から|「いくら戻るか」を聞かずに、解約を決めかけている方へ
ご相談では、設計書の数字だけを見て解約を考えていた方が、保険会社に確認したら金額が違っていた、という場面があります。まず保険会社へ「今解約したら、いくら戻るか」を聞くだけで、判断の材料が変わります。当社では、その回答を一緒に見ながら、解約するか、貸付や他の資金で対応するかを整理しています。
今日の一歩:保険会社に「今解約したら、いくら戻るか」を聞く
よくある質問
Q1. 解約すると、いつお金が振り込まれますか
振込までの日数は、書類が保険会社に届き、不備がないと確認されてから進みます。会社や時期によって異なるため、手続きの際に「振込までの目安」を確認してください。
Q2. 受取人は、解約できますか
解約できるのは、契約者です。受取人が契約者と別の人である場合、受取人は解約の手続きをすることができません。
Q3. 解約返戻金が払込額より少ないとき、税金はかかりますか
払込保険料より少ないときは、一時所得は生じず、課税の対象にはなりません。ただし、その損失を、ほかの所得と通算することもできません。
Q4. 契約者貸付を使ったあと、亡くなったらどうなりますか
貸付の元金と利息が残っている場合は、死亡保険金から差し引かれて支払われます。受取人が受け取る金額が減るため、貸付を使うときは、家族に伝えておくことをおすすめします。
Q5. 解約してから、後悔しました。取り戻せますか
解約は、元に戻せないとされています。同じ内容の契約に入り直すことも、年齢や健康状態によってはできません。だからこそ、手続きの前に、戻る金額と、お金が必要な理由を整理しておくことが大切です。
参考にした公的情報
- 国税庁 タックスアンサー No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
- 国税庁 タックスアンサー No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
- 生命保険文化センター 解約と解約返戻金、解約手続き等
- 生命保険文化センター 生命保険の契約にあたっての手引
- 国民生活センター 外貨建て生命保険の相談が増加しています!(2020年2月20日)
いずれも2026年10月9日時点で確認した内容です。制度や取り扱いは変わることがあるため、最新の内容は各ページでご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
