持病があって告知あり型の生命保険を断られた。年齢で引受の上限を超えていた。それで「告知なしで入れる一時払い終身保険」を調べ始めた——という方が、この記事の読者だと思います。パンフレットを見ると、どの会社も「健康状態の告知は不要」と書いてあり、一見どれも同じに見えます。
ところが実際に横に並べると、いちばん大きく違うのは保険金額でも予定利率でもなく、「待機期間」です。契約してから何年間、死亡しても保険金が出ないのか。ここが会社によって9か月のところから3年のところまで分かれます。さらに外貨建ての場合、待機期間中に亡くなったときに戻ってくるお金の為替の扱いまで会社ごとに違う。この記事では、この2点を中心に、比較のときに見るべき軸を整理します。なお当社も保険募集を行う立場です。特定の商品名は挙げません。
先に結論:待機期間は会社によって9か月〜3年に分かれる
待機期間が3年の商品と9か月の商品では、契約してから保障が本格的に始まるまでの時間が2年3か月違います。80代・90代で加入を検討している方にとって、この差は小さくありません。にもかかわらず、パンフレットの表紙には書いていないことが多い項目です。
待機期間とは何か
告知なし型(無選択型)の生命保険は、健康状態を一切告知せずに加入できます。その代わり、保険会社は健康な人と健康でない人を区別できません。そこで、契約から一定の期間内に亡くなった場合は、契約した保険金額ではなく「既に払い込んだ保険料に相当する額」を返す、という設計になっています。この期間が待機期間です。会社によっては「保険金削減期間」「責任開始期の特則」といった名前で書かれています。
一時払いの場合、払い込むのは契約時の1回だけです。ですから待機期間中に亡くなると、原則として払った金額がそのまま戻ってくることになります。損はしないが、増えもしない。相続対策として保険に入る意味が、この期間中は成立しないということです。
| いつ亡くなったか | 受け取れるもの |
|---|---|
| 待機期間中(病気など) | 既払込保険料に相当する額の返還。契約した保険金額は出ない |
| 待機期間中(不慮の事故) | 保険金額が支払われる取扱いの会社もある(会社により異なる) |
| 待機期間の経過後 | 契約した保険金額 |
なお、待機期間中に亡くなって返還を受けた場合、その返還金が相続税法上どう扱われるかは契約の建て付けによって変わります。死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数、国税庁タックスアンサーNo.4114)が使えるかどうかも含め、税務の判断は税理士にご確認ください。
会社差が9か月と3年では、何が変わるのか
告知なし型を検討する方の多くは、健康に不安がある、あるいは高齢です。つまり「待機期間を無事に通過できるか」が、そもそもの前提条件になります。
待機期間が9か月の商品なら、契約した年の年末には保障が始まっている計算です。2年なら翌々年、3年なら3回目の契約応当日まで待つことになります。健康状態に不安を抱えて加入を検討しているのに、3年待つ設計の商品を選んでしまうと、加入した意味が出ないまま期間が終わる可能性が現実にあります。
逆に言えば、待機期間が短い商品は保険会社側のリスクが大きいため、保険金額の設定(払込額に対して何倍の保障になるか)や年齢の上限が厳しめになることもあります。「待機期間が短い=必ず良い」ではありません。待機期間・保険金の倍率・年齢上限の3つを、同じ表の上で見る必要があります。
外貨建ての場合、返還のレートが会社によって違う
ここが見落とされやすい点です。外貨建ての告知なし型で待機期間中に亡くなった場合、「既払込保険料相当額」を円に換算するときのレートが、会社によって違います。大きく2つの型があります。
- 払込時のレートで換算する型——契約したときに円をドルなどに替えたレートで戻す。円換算では、払った円の金額に近い額が戻る計算になります。
- 死亡時のレートで換算する型——外貨建ての払込保険料額を、亡くなった時点のレートで円に戻す。契約後に円安が進んでいれば増え、円高が進んでいれば減ります。
どちらが有利かは、契約から死亡までのあいだに為替がどう動くか次第なので、事前には決まりません。大切なのは、契約する前に「この会社はどちらか」を確認しておくことです。この点はパンフレットの本文ではなく、契約締結前交付書面や約款に書かれていることが多いので、募集人に口頭で確認して、書面のどこに書いてあるかを指さしてもらうのが確実です。
あわせて、円に戻すときの為替手数料(1通貨あたり何銭か)と、保険金を外貨のまま受け取る選択肢があるかどうかも確認しておくと、受け取る側が困りません。
相談現場から|相談員メモ
告知なし型のご相談で、待機期間の長さをご存じで来られる方はほとんどいません。「告知がいらない」という一点で商品が同じに見えてしまうためです。実際には、待機期間が9か月の会社と3年の会社が同時に存在していて、しかも外貨建てなら待機中に亡くなったときの返還レートまで違う。当社は愛知県内で累計約500件の相続相談を受けてきましたが、この2点を並べて見せると、検討していた会社とは別の選択に落ち着く方が一定数おられます。一時払い終身保険は予定利率も各社独自で、月によって条件の良い会社が入れ替わります。急ぐ理由がなければ、その月の横並びを見てから決めても遅くありません。会社・商品により取扱いは異なります。
「告知なし」でも入れない場合がある
告知なし型は健康状態を告げる必要がないというだけで、無条件に誰でも入れるわけではありません。申込書には、健康状態の告知とは別に、引受の可否を判断するための質問が置かれているのが一般的です。次のような状況は、一般に申込みができない、あるいは引受を断られることがあります。
- 現在入院している、または入院の予定が決まっている
- 医師から余命に関する告知を受けている
- 年齢が引受の上限を超えている(上限は会社・商品により異なります)
- 公的介護保険の要介護認定を受けている、施設に入居しているなど、会社ごとに定めた条件に該当する
- 契約内容を理解して自分で意思表示することが難しい状態にある
これらは一般的な例で、実際にどこまでが対象になるかは会社・商品により異なります。当てはまるかどうか微妙な場合は、申し込む前に募集人を通じて確認してもらってください。健康状態そのものについての判断は医師の領分であり、当社はそこに立ち入りません。
倍率で見た不利は、思ったより小さいことがある
「告知なしだから、告知あり型に比べてずいぶん条件が悪いのだろう」と考えて、最初から諦めてしまう方がいます。一時払い終身保険に限っていえば、そこまで大きな差にならない場合があります。
理由は、一時払い終身保険がもともと貯蓄性の強い商品だからです。まとまった額を一度に払い込み、その額に近い保険金額を確保する設計なので、払込額に対する保険金額の倍率は、告知あり型でも高齢になるほど1倍台に近づいていきます。告知の有無による差が乗る前の水準がもともと控えめなので、差そのものも大きくなりにくい、という構造です。
ただしこれは一般的な傾向の話で、年齢・性別・会社・商品によって結果は変わります。告知あり型で引受の可能性が残っているなら、両方の設計書を取って倍率を並べてみるのが確実です。告知あり型で通るなら、そちらのほうが待機期間の問題も生じません。
比較は、横に並べないと見えない
ここまで挙げた項目は、どれも1社の設計書やパンフレットの中では「そういうものです」としか見えません。9か月が短いのか長いのかは、他社が何か月かを知らないと判断できないからです。比較するときは、次の6項目を1枚の表にしてください。
- 待機期間の長さ——9か月か、2年か、3年か。
- 待機期間中に亡くなったときに戻る額——既払込保険料の全額か、一定割合か。
- 不慮の事故による死亡の扱い——待機期間中でも保険金額が出るか。
- 外貨建てなら、返還時の為替の扱い——払込時レートか、死亡時レートか。為替手数料はいくらか。
- 払込額に対する保険金額の倍率——同じ年齢・同じ払込額での比較。
- 年齢の上限と、申込みができない条件——入院中・施設入居中などの扱い。
この表を自分で作るには、複数社の設計書を取り寄せる必要があります。1つの窓口が扱えるのは、その窓口が代理店契約を結んでいる会社だけです。銀行の窓口なら提携先、士業の事務所なら提携している会社が中心になります。どこに相談するにしても、最初に「何社の中から比べていますか」と聞いておくと、その表がどこまで埋まるかが分かります。
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本記事の制度・数値は2026年9月時点の情報です。待機期間の長さ、待機期間中の取扱い、返還額の為替換算方法、引受の条件は、いずれも保険会社・商品により異なります。実際の条件は各社の契約締結前交付書面および約款でご確認ください。本記事は特定の商品への加入を勧誘するものではなく、健康状態に関する医学的な判断を行うものでもありません。相続税の非課税枠の適用や申告の要否といった税務の個別判断は税理士にご確認ください。当社は保険募集を行う立場です。