健康診断で引っかかって以来、生命保険には入れないものだと思い込んでいました。相続対策として生命保険が有効だと聞いても、「どうせ自分には関係ない」と読み飛ばしていた――。そんな方は少なくありません。
この記事の結論(30秒まとめ)
持病があっても加入できる生命保険(告知緩和型・引受基準緩和型)は実在します。告知項目が3〜4問程度に絞られており、持病があっても「はい」の数が少なければ加入できる場合があります。ただし通常の保険より保険料が割高で、契約から一定期間は保険金が削減される商品もあります。「入れるか」だけでなく「入る意味があるか」を先に確認することが重要です。
「持病があるから無理」という思い込みの多くは、実は正確には「通常の生命保険には入りにくい」という話であり、「生命保険にまったく入れない」という話ではありません。だからこの記事では、持病があっても入れる保険のしくみと、相続対策として使う前に確認すべき注意点までを整理しました。
持病があっても入れる保険のしくみ
持病がある方向けの生命保険には、主に「告知緩和型(引受基準緩和型)」と「無選択型(告知不要型)」の2種類があります。
告知緩和型は「持病があっても、直近の入院や手術がなければ入れる」という設計であり、無選択型は「病歴を一切問わない代わりに、保険料と条件で調整する」という設計です。どちらも通常の保険と比べて、支払う保険料に対して受け取れる保険金額の割合(いわゆる保険としての効率)は下がる傾向にあります。
なお、まとまった現金を1回で払い込む一時払い終身保険にも、早期解約時の元本割れなど別の注意点があります。詳しくは一時払い終身保険のデメリットとは?で整理しています。
がんの既往がある場合|経過年数で選択肢が変わる
過去にがんの診断・治療を受けたことがあると、「もう一生入れない」と感じている方が多いのですが、正確には「経過年数によっては入りにくい」という話であって、「一切入れない」という話ではありません。
保険会社が見るのは、主に治療終了(手術・抗がん剤治療・放射線治療などの完了)からの経過年数と再発・転移の有無です。一般的な傾向として、治療終了から5年、10年と経過し、再発が確認されていない期間が長いほど、通常の保険や告知緩和型に加入できる可能性が高まります。逆に治療終了から日が浅い場合や経過観察中の場合は、選択肢が限られます。
| 選択肢 | 目安となる条件 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 通常の生命保険 | 治療終了から長期間(目安5〜10年)再発なし | 告知が通れば保険料は通常水準。経過年数と告知内容次第 |
| 告知緩和型(引受基準緩和型) | 経過年数が短くても検討の余地あり | 告知項目が3〜4問程度。保険料は割高で、契約から一定期間は保険金が削減される商品が多い |
| 無選択型(告知不要型) | 経過年数を問わず検討できる | 告知不要な代わりに保険料はさらに割高。加入できる保険金額の上限も低め |
【当社の相談から】
がんの治療終了から8年が経過していたご相談者様が、「がん経験者だから」と最初から無選択型のみで検討されていたケースがありました。実際に告知緩和型で確認したところ、経過年数と告知内容次第では、より条件の良い商品に加入できる可能性があることが分かりました。最初から無選択型に絞らず、通常の保険から順に確認することをおすすめします。(当社に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です)
治療中であっても、条件を満たせば加入できることがあります。70代の女性で、がんに罹患して最近まで入院していた方が、(1)現在入院中でない (2)余命宣告を受けていない (3)申込日以降の入院が決まっていない (4)施設に入居していない、という条件を満たしていたため、告知なし型(待機期間9か月)に子2人を受取人として加入できた例があります。加入可否の最終判断は各保険会社が行います。
削減期間・待機期間は、契約から何年か
告知緩和型・無選択型で最も見落とされるのが、契約直後の一定期間、保険金が減らされる仕組みです。呼び方は商品によって「保険金削減期間」「待機期間」「第1保険期間」と変わりますが、中身は同じです。
月払いの告知緩和型では、契約から1〜2年以内に病気で亡くなった場合、通常の死亡保険金ではなく、既払込保険料相当額など少ない金額しか受け取れない設計が一般的です(不慮の事故による死亡は対象外とされ、契約当初から通常の保険金額が支払われることが多くなっています)。
相続対策でまとまった資金を入れる一時払いの告知なし型は、事情が違います。待機期間中に亡くなった場合に戻ってくるのは払い込んだ保険料相当額です。1,000万円払い込んで待機期間中に亡くなれば、戻るのは1,000万円。つまり「損はしないが、増えもしない」期間です。待機期間が明ければ、通常どおりの死亡保険金になります。
そして、この待機期間の長さは会社によって9か月から3年までと大きく違います。同じ「告知なし」でも、9か月と2年では備えとしての意味がまったく変わります。外貨建ての場合は、待機期間中に亡くなったときの返還額を払込時のレートで計算する会社と、亡くなった時点のレートで計算する会社があり、円高が進んでいれば手取りが目減りします。会社ごとの待機期間と為替の扱いは告知なしで入れる一時払い終身保険の「待機期間」比較|会社によって9か月〜3年、返還の為替扱いも違うにまとめました。
確認する場所はパンフレットではなく、契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報)と、ご契約のしおり・約款です。窓口で「契約締結前交付書面を見せてください」と言えば出てきます。口頭の説明とこの書面が食い違っていたら、書面のほうが契約の内容です。
相続対策として使う前に確認すべき3つの注意点
「相続税対策になる」と勧められて加入する前に、次の3点を確認してください。
- 非課税枠をすでに使い切っていないか ― 死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を、既存の保険ですでに使い切っている場合、追加加入の節税効果は限定的です。
- 契約直後に一定期間、保険金が削減されないか ― 告知緩和型の多くは、契約から1〜2年以内に死亡した場合、既払込保険料相当額など、通常より少ない金額しか受け取れない設計になっています。健康状態が思わしくない方ほど、この期間の設計を必ず確認する必要があります。
- 支払う保険料の総額に見合っているか ― 保険料が割高な分、何年生きれば「払った額」と「受け取れる額」が見合うかを、契約前に必ず試算してもらいましょう。
今日の一歩|告知書を書く前に、順番と書面を確かめる
1. 順番を飛ばさない
通常の保険 → 告知緩和型 → 無選択型、の順に確かめます。窓口で「通常の保険では引き受けできませんか。できないなら、その理由を教えてください」と聞いてください。この一言を飛ばすと、入れたかもしれない条件を自分から手放すことになります。
2. 手元にそろえるもの
お薬手帳/直近の健康診断の結果/通院先と病名が分かるもの/すでに加入している保険の証券。告知の項目に答えるとき、記憶だけで書くと後で食い違いが出ます。
3. 告知書は思い出しながら書かない
事実と違う記載をすると、告知義務違反として保険金が支払われないことがあります。判断に迷う項目は空欄にせず、「この項目はどう答えればよいですか」とその場で確認し、書類で残る形にしてください。
4. 契約締結前交付書面で見る4つ
①削減期間が何年何か月か/②その期間中に亡くなったときに支払われる額を数字で/③加入できる保険金額の上限/④払い込む保険料の総額。パンフレットではなく、この書面に書かれていることが契約の内容です。
5. 非課税枠の残りを先に出す
500万円×法定相続人の数から、すでに加入している死亡保険金の合計を引いた額が、これから使える枠です。ここが残っていなければ、割高な保険料だけが残ります。税額の試算は税理士にご確認ください。
【当社の相談から】
「相続税対策になります」と勧められて告知緩和型に加入したものの、実は非課税枠をすでに使い切っていたケースがありました。この場合、追加で入る保険は非課税枠の観点では意味を持たず、単なる貯蓄性商品として保険料の割高さだけが残ってしまいます。加入前に、既存の保険も含めた非課税枠の使用状況を確認することが欠かせません。(当社に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です)
こんな方は、無理に加入を急ぐ必要はありません
すでに死亡保険金の非課税枠を使い切っている方、そもそも相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えない見込みの方は、告知緩和型に無理に加入する必要はありません。費用をかける必要はありません。そのうえで、ご自身の財産状況や非課税枠の使用状況に不安がある場合は、30分の無料相談でご一緒に確認できます。
セルフチェック|加入を検討する前に確認したい5項目
- □ すでに加入している生命保険の非課税枠の使用状況を把握していない
- □ 相続財産が基礎控除を超えるかどうか、確認したことがない
- □ 「相続税対策になる」という説明だけで、契約直後の削減期間の説明を受けていない
- □ 保険料の総額と受け取れる保険金額を比較したことがない
- □ 特定の相手に確実に現金を渡したいという目的がある
0〜1個:ご自身の状況を把握できている段階です。無理にご相談いただく必要はありません。判断に迷う点が1つでもあれば、30分の無料相談でご一緒に確認できます。
2〜3個:判断に必要な情報が不足している状態です。契約前に、無料の生前対策診断で状況を整理することをおすすめします。
4個以上:契約前に第三者の視点で確認したほうがよい状況です。まずは30分の無料相談で全体像を確認することをおすすめします。
よくある質問
持病があると、必ず告知緩和型しか選べませんか?
持病の種類や治療状況によっては、通常の保険に加入できる場合もあります。告知緩和型は「入りやすさ」を優先した設計のぶん保険料が割高になるため、まずは通常の保険で加入できないか確認したうえで検討することをおすすめします。
高齢でも持病があっても入れる保険はありますか?
商品によっては高齢かつ持病がある方でも加入できるものがあります。ただし年齢の上限や保険料は商品ごとに大きく異なるため、一般化はできません。高齢での加入全般については80代・90代でも入れる生命保険はある?もあわせてご覧ください。
保険料が高いのに、それでも入る意味はありますか?
非課税枠に余裕があり、特定の相手に確実に現金を渡したいという目的がある場合は、割高な保険料を差し引いても意味を持つことがあります。一方、非課税枠を使い切っている場合や相続税がそもそもかからない財産規模の場合は、効果が限定的になります。ご自身の状況次第で結論が変わる点です。
費用をかけたくないのですが、相談してもいいですか?
もちろんです。ご相談自体は無料で、費用が発生するのは正式にご依頼いただく段階からです。「そもそも入る必要があるか、確認だけしたい」というご相談も歓迎しています。
まとめ
持病があっても、告知緩和型や無選択型の生命保険であれば加入できる可能性があります。ただし保険料が割高で、契約直後は保険金が削減される商品も多いため、「入れるか」だけでなく「非課税枠に余裕があるか」「入る意味があるか」を先に確認することが重要です。生命保険と相続の全体像は生命保険と相続の完全ガイドで、非課税枠がいくら残っているかの数え方は生命保険の非課税枠はいくら?で解説しています。
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本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額計算や保険商品の推奨を行うものではありません。保険のご相談は、全社を比較できる提携乗合代理店をご紹介します。
勧められた保険は、契約前に第三者に見てもらえます
提案書(設計書)の写しをお持ちいただければ、①相続全体の設計から見て本当に必要かを、特定の保険会社に偏らない立場で確認し、②比較したほうがよい場合は、複数の保険会社を横断して比較できる提携の乗合代理店をご紹介します。オンラインで全国どこからでも、30分・無料です。「いまは加入しなくて大丈夫です」という結論も、そのままお伝えします。
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